食品工場の監査とは、製造委託先の工場、原材料仕入れ先の工場に対して、食品安全の管理体制の確認・評価を行うことです。
実際に工場に出向いて、工場の担当者とコミュニケーションをとりながら製造エリア内、文書や記録類を確認し、基準を満たしているか、問題点・改善点はないかを見ていきます。
食品安全に関する工場監査の目的は、その工場の製品が提供されるようにすることです。
監査を実施するタイミング
・取引開始時に実施
・定期的に実施
・問題発生時に実施
に分かれるでしょう。
取引開始時に実施する監査は、その製造工場の製品を仕入れて問題がないか、取引開始をしてよいのかを判断します。定期的に実施する監査は、その製造工場の中で特別な変更点はないか、食品安全の管理体制を維持できているかを確認します。
監査の際にはその製造工場のすべてを見ることはできません。サンプリングによって見た部分と、見ることができなかった部分も発生します。ですので、1回の監査ではなくて定期的にその工場を見ていくことが望ましいです。
問題発生時に実施する監査は、その製造工場からの仕入れ品で重大な不具合が発生し、再発防止対策の確認をするときなどが該当します。
すべての仕入れ先に対して監査を行うのは、難しい場合が多いでしょう。優先すべき会社は、仕入れ製品の不具合発生が多い会社、過去に重大な不具合発生があった会社になります。
監査のチェックリスト
チェックリストの作成準備
監査をする際には、なんらかの基準、チェックリストを用意する必要があります。
そして、その基準やチェックポイントに対して適合しているか、それとも適合しておらず改善が必要なのかを判断していきます。
改善が必要だと指摘箇所については、改善依頼を出します。その場で対応者とコミュニケーションをとって、指摘内容について理解をしてもらいます。
指摘箇所が工場内であれば、指摘箇所の写真は必要になります。設備や機械、道具、原材料や仕掛品、包材などモノに対する指摘、あるいは従業員がルールを守っていない、清掃ができていないといったことであれば、写真があったほうが後々指摘箇所を見るときにわかりやすいです。
写真、改善指摘内容についてをまとめたら、原因と再発防止対策を記入してもらうよう依頼します。
大きく分けると
- 一般的な衛生管理
- マネジメントシステム
に分けられます。
一般的な衛生管理は、清掃や洗浄、従業員の衛生管理、工場設備管理などのことです。マネジメントシステムは、食品安全方針、トレーサビリティシステム、製品の回収、HACCPなどです。
監査のチェックリストの作成方法は、
- 自社基準のものを作成する
- 食品安全マネジメントシステムを利用する
が考えられます。
自社基準のものを作成する場合は、いちからチェックリストを作成していくことになります。
食品安全マネジメントシステムには、規格があります。食品会社で要求事項に沿った管理が行われているかどうか審査が行われ、認証が与えられます。認証を取得することによって、マネジメントシステムが構築・運用されていることを証明することができます。この食品安全マネジメントシステムを利用して、工場の品質管理状況を見ていくこともできます。
とくに食品安全マネジメントシステムの認証を取得している工場が対象であれば、その規格の内容で見ていくと、スムーズに対応してもらえるはずです。
主要なものとしては、JFS規格、FSSC22000があります。
マネジメントシステム
JFS規格
JFS規格は、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が開発した規格です。
その内容は、
- 食品安全マネジメントシステム FSM
- 適正製造規範 GMP
- 危害要因分析重要管理点 HACCP
の3つ分かれています。
規格のレベルとして、JFS-A、JFS-B、JFS-Cの3つに分かれていて、規格要求事項としてはAが少なく、Cが多く、Bはその間です。それぞれの組織が自らに合った食品安全マネジメントシステムを選んで構築していくことができます。
日本の認証であり規格要求事項がもともと日本語で書かれているため、理解しやすいという特徴があります。
FSSC22000
FSSCは、Food Safety System Certification の頭文字をとったもので、オランダにあるFSSC22000財団が開発した食品安全マネジメントシステムの規格です。
国際食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)という団体によって承認されています。GFSIは世界的な食品関連会社が集まり、食品安全規格の承認を行う民間の団体です。
- ISO22000
- PRP(前提条件プログラム)
- 追加要求事項
に分かれています。
ISO22000は、食品安全マネジメントシステムの国際規格です。HACCPを含む、安全な食品を提供するためのマネジメントシステムです。
PRP(前提条件プログラム)は、食品製造での衛生管理や設備管理、汚染の予防手段など安全な食品を製造するための基本的な事項です。
追加要求事項は、上記2つに含まれていない追加された事項です。たとえば、食品防御や食品偽装、製品開発などがあります。
スケジュール
工場の規模によって監査の時間は変わりますが、長くても1日の中で完了させることが基本です。
大きく分けると、工場内の監査、文書や記録類の監査に分かれます。
どちらが先かですが、私が監査を受けた経験では、先に工場内を見るという監査員が多かったです。
ただ、工場に入る前には、製造エリアや人やモノの流れ、製造工程は把握しておきたいですね。またHACCPやアレルゲン情報などの重要項目や、何か製品に不具合があって監査に来たのであれば、その不具合の再発防止対策など、確認したうえで工場に入るようにします。
製造エリアの概要やHACCPなどの重要項目は先に文書類を見ておき、工場内に入り監査を行う。製造エリア内では、製造状況や使用されているマニュアル類、記録類を見ます。その後は製造エリアを出てきて、応接室等で文書類、記録類を確認していきます。事前にマニュアル類を見ることができるとよいです。
できれば、仕入れている製品を製造しているときに工場を見ることができるのが望ましいです。事前に対応者に伝えておきましょう。該当製品の製造数が少なく、スケジュールが合わないときには、せめて同じラインが稼働しているところを見るのがよいでしょう。
事前に行っておくこと
事前に行っておくことには、
- 事前チェックシート
- 資料の用意
- 作業服、靴等の用意
- 昼食について連絡
- 仕入れている製品の製造を要望
の順で説明します。
チェックシート
工場に訪問をする前に、チェックシートで工場のマネジメントシステム、管理状況を確認しておくとよいでしょう。その中で気になる箇所、確認したい箇所を事前に把握しておきます。
資料の用意
事前にマニュアル類を見ておくことができると、しかしすべてを送ってもらうことも難しいです。重要な書類のみ事前に送ってもらうとよいでしょう。
たとえば、工場図面、フローダイアグラムや危害分析、HACCPプランなどです。送ってもらわなかった場合は、監査当日に訪問後、まずそれらの重要な書類を見てから、工場の監査に移るとよいです。
事前に送ったチェックリストには、工場現場のこと、書類やマネジメントシステムのことに分かれます。その内容を見ておきましょう。
確認したい書類は一覧になっていると、監査を受ける工場側としては準備しやすいです。
どんな書類をどの順番で見ていくか決めておき、それを相手にも伝えておくとよいでしょう。
チェックリストに記載された順番に、それに関連した書類や記録を見ていくというのがわかりやすいです。
それらの書類を用意しておいてもらいたいこと、それを順番に見ていくことも伝えておきましょう。
あるいは、チェックリストとは別で、見る書類リストを作成するのもよいです。
作業服、靴等の用意
工場内を監査するときに着用する作業服、靴などについて、自分で用意するのか、監査先の工場に用意していただくのかを決めて連絡しておきます。
また、工場内で使用するバインダーやペン、カメラ、ポーチなど用意しておきます。会社によっては指定のバインダーやペンなどあるかと思います。それは監査先の工場に従います。
昼食について連絡
昼食についても、自分で用意するかどうか、監査先の工場に連絡しておきましょう。
仕入れている製品を製造を要望
できれば、仕入れている製品を製造しているタイミングで監査するのがよいでしょう。
当日の流れ
当日の流れとしては、実際の監査の前に簡単な開始ミーティング、終了時には総括や指摘内容を伝達する終了ミーティングを行います。
- 開始ミーティング
- 場の基本情報や重要点の確認
- 工場の監査
- 文書や記録類の確認
- 指摘事項のまとめ
- 終了ミーティング
となります。
開始ミーティングでは、監査の概要、スケジュール、目的、工場の基本情報や製品概要の確認などを行います。当日の製造状況を確認します。
マネジメントシステム認証を取得しているか確認し、認証があるのであれば、それはできていることになります。
また、監査での注意事項について話をします。
- 持ち込み品が何であるか
- 改善指摘箇所についてカメラでの撮影をすること
- 得た情報は監査でのみ使用すること
などについて共有します。また、工場として監査員への要望がないかを確認するとよいでしょう。
これまでに監査を受けた経験では、基本事項や重要な事項のみを確認したあとに、工場内の監査をし、その後、書類や記録の監査をする会社が多いです。工場を先に見る場合には、以下のことは工場に入る前に確認しておくとよいでしょう。
- 基本情報 工場図面、物や人の流れ
- HACCPプラン、CCP
- フローダイアグラム、危害分析の重要箇所
- アレルゲン
- 不具合の改善内容(あれば)
などです。
最初に、監査を行うタイミングは、取引開始時、定期、問題発生時と書きました。定期的な監査であれば、前回の監査での指摘事項と改善内容の確認、これは工場内でも見るべきことですね。
不具合などの問題発生時での監査であれば、不具合の再発防止対策の実施状況などを見ます。その後、継続されているのか、再発防止対策の有効性はあるのか、です。
製造現場を見る流れとしては、原材料や資材の搬入から製造、出荷の流れのとおりがよいでしょう。事前に記入してもらったチェックシートに見るべきポイントが網羅された状態になっていれば、それを見ていきます。
清掃状況、防虫管理、機器類のメンテナンス、ルールの順守状況とその記録、システムなどを見ます。
上記したように、監査のチェックリストの作成方法は、
- 自社基準のものを作成する
- 食品安全マネジメントシステムを利用する
が考えられます。これらを利用して点検を進めていきます。
改善指摘箇所のまとめ
改善を依頼する箇所は資料でまとめて、後日送付します。写真、指摘箇所、原因、対策、改善した日、担当、改善予定日などの項目を入れた表で作成します。
改善にはすぐに対応できることと、できないことがあります。すぐに対応できない場合は予定を書いてもらいます。改善がなされて完全に完了するまで追うようにします。
工場の監査結果について評価をする場合には、チェックリストを満たさない点や、指摘箇所があったらそれらをマイナス点とし、100点から減点していく方式で評価することが多いです。
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