食品工場の防虫防鼠の基本

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食品工場で問題となる害虫は様々で、貯穀害虫など食品で発生するものもあれば、コバエ、ゴキブリなど一般家庭でもよく見かけるものもあります。

屋外から工場建屋内に虫が侵入したり、工場内部の発生源で虫が産んだ卵から成虫となり大量の発生となってしまうと、食品への混入など食品へ影響を与える可能性が高くなります。

また、ネズミの侵入・工場内での活動により、食品を介した病原体の伝播など被害が発生することもありえます。

防虫防鼠は、虫や鼠族(そぞく)を防除することであり、虫や鼠族による害やトラブルを防ぐことです。ペストコントロールとも呼ばれます。(ペストは害虫の意味)

食品工場の防虫防鼠は、食品への異物混入対策、食品の安全保証のために行われる取り組みです。防虫防鼠の重要性はここにあります。

IPM 総合的有害生物管理

食品工場では、IPMと呼ばれる総合的有害生物管理の手法によって管理されるます。IPMは、Integrated Pest Manegement の頭文字をとったものです。

害虫を殺虫剤で除去するといったひとつのことに依存するのではなく、様々な方法を取り入れて総合的に害虫を防除するのは、IPMです。

モニタリング(継続的な観察・記録)を行い、モニタリング結果から対応策を検討し実行することになります。

トラップ調査によって害虫の捕獲状況から工場内に侵入したり住みついていないかを調べ、もし工場内の侵入が見られるのであれば侵入経路や発生源を調べて原因を特定します。

対応策は侵入経路を無くしたり、発生源ができないようにしたり、必要に応じて薬剤の散布もあります。発生源ができないようにするのは、製造エリアでの清掃などが関わってきます、防虫防鼠に関する従業員教育や従業員による点検を行うなども必要です。

先に書きましたが、モニタリングの結果で状況を把握し、その状況に応じた対策をとる。これを継続していくことになります。

  • モニタリングとその評価、分析
  • 侵入発生を防ぐ環境整備、日常管理方法の改善
  • 環境の確認や、日常管理の定着度の確認

これらを継続していきます。

外部の防虫防鼠業者

食品工場では、防虫防鼠を外部の防虫防鼠業者へ委託していると思われますが、月1回の訪問でモニタリングが行われることが多いでしょう。

モニタリング結果から工場内へどのような虫の侵入または工場内での発生が見られるのかを知ることができます。そして外部からの害虫の侵入箇所や工場内部での発生源などについても助言をもらうことができるでしょう。

防虫防鼠業者と協同して、工場内の虫の発生状況について食品に影響を与えないレベルに維持し続けることが目標となるでしょう。

たとえばネズミであれば日常でネズミを見かけることや活動の痕跡を見かけることがない、といったものなります。

月1回の防虫防鼠業者によるモニタリングを行うだけではなくて、日常の対応も当然ながら重要です。日常の生産活動によって発生し害虫の発生源になる食品残渣は、日常管理で除去されるべきものです。

昆虫の基礎知識

外部侵入・内部発生

昆虫は外部から侵入してくるだけでなく、工場内部で発生源を見つけて内部で発生する昆虫がいます。これは内部発生と呼ばれ、たとえば、貯穀害虫は原料に付着してきた工場内で定着・繁殖してしまったります。

チョウバエやノミバエなどのいわゆるコバエ類であれば、工場内部で発生源となるのは有機物が腐敗する部分です。卵を産み、かえった幼虫がサナギを経て成虫となりえます。

飛翔性昆虫、歩行性昆虫

昆虫は、どのように移動するのかという観点から、飛翔性昆虫、歩行性昆虫に分けられます。

  • 飛翔性昆虫とは、主に飛んで移動している虫のことで、ハエ類、ガ類などが該当します。
  • 歩行性昆虫は、主に歩いて移動する虫のことで、ゴキブリ、アリ、コウモリ、クモ、ヤスデなどが該当します。

外部から侵入する昆虫は、飛んで移動してきて工場に入るものと、歩いて移動し侵入する虫がいるということになります。また、原材料に混入していたり、包装資材あるいは従業員に付いて工場内に入ることもあります。

昆虫を誘引する要因

外部侵入の昆虫を誘引する要因として光、臭い、熱です。

虫は光に集まってくる走行性という習性を持っています。代表例としてはユスリカです。原料の搬入口、製品の出荷口、建屋内外を開放することがある場所では、ライトを防虫仕様の虫からは見えない光を使用します。

臭いに引き寄せられる虫は、果物、アルコール臭などに集まってきます。ショウジョウバエは生ごみ置き場などの清掃が不十分であると、発生する臭いに誘引されます。飛翔性害虫の発生源の範囲は広く、落ち葉が排水溝に溜まり腐敗してコバエの発生源となります。

食品の製造で発生した食品廃棄物などの置き場は、ハエを誘引することになります。そうして工場周辺に集まってきた虫は、工場の出入り口から工場内に入ってしまったり、従業員が入る際や物が納品される場合に、一緒に建屋内に虫が入ることが考えらえます。

熱要因としては、外気温が下がる時期に、寒さを避けるために排気口、温水が流れる排水溝などに虫が誘引されます。

光、臭い、熱ではありませんが、敷地に水たまりができてユスリカの発生源となったりもします。

昆虫の種類

昆虫の種類についてです。

温暖・湿潤環境 内部発生

飛翔性

  • チョウバエ   食品残渣、排水溝などで発生する
  • ノミバエ    〃
  • ニセケバエ   〃

歩行性

  • チャバネゴキブリ

乾燥、貯穀害虫 内部発生

飛翔性

  • ノシメマダラメイガ  穀類の加工品などから発生する。原料由来で持ち込まれる。
  • タバコシバンムシ   〃
  • コクヌストモドキ   〃
  • ノコギリヒラタムシ  〃

菌食

チャタテムシ  食菌性の昆虫。食品、包装資材由来で工場に持ち込まれる。

外部発生し臭気・光源で誘引

飛翔性

  • イエバエ  臭いで誘引され工場に侵入する。動物粉や食物残渣などに産卵する。
  • ショウジョウバエ  樹液、腐敗した果実など発酵物に集まる。走光性を持ち、光源に誘引される。
  • ユスリカ  河川、湖沼で発生する。夕方になると灯りのあるほうに飛翔。

  • クロゴキブリ  外部から侵入
  • コオロギ  工場周囲の草地などで発生する場合がある
  • アリ  建屋内に侵入することがある
  • クモ  昆虫の捕食者として工場内に棲息する場合がある

ネズミの種類と基礎知識

代表的なネズミとしては、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種類があります。

  • クマネズミ
  • ドブネズミ
  • ハツカネズミ

クマネズミ:体長は170㎜程で、警戒心が強い。樹上で生活をするネズミで、木登りが上手く、跳躍力があります。

ドブネズミ:体長が220㎜程で、警戒心は普通。クマネズミと比べて、背面が褐色で腹面が白色です。家の床下、都市の地下街に多く棲息しています。

ハツカネズミ:体長は75㎜程で、警戒心は弱い。生活場所は広く、屋外・屋内に棲息しています。

ネズミが工場内に見られる状態では安心して食品製造をできる環境ではありません。ネズミが活動していれば、その痕跡が見られます。これはラットサインと言われていて、足跡が見られたり、尿の跡が見られたり、フンが転がっていたりします。それが製造ラインの近く、ましてや製造ライン上に見られたら、安全な食品製造ができる状態ではありません。

ネズミの体や排泄物に直接触れて病原体が人に感染したり、ネズミの排泄物内の病原体が食品をとして間接的に伝播されます。間接伝播として知られているのが、サルモネラ菌の汚染です。

入口をふさぐ、住処をつくらせない、食料を与えない、建屋の穴を無くし侵入口を無くす、工場内では長期間使用しない機器や資材を放置しないなどの対応があります。

超音波防鼠器の設置、忌避剤の散布、毒餌の設置、粘着トラップの設置などがあります。

モニタリング、トラップ

飛翔性昆虫をとらえるトラップとしてライトトラップ、歩行性昆虫をとらえるものとして粘着式トラップに分けられており、

ライトトラップ

ライトトラップは、昆虫類が反応する波長のランプを用いており、誘引された虫が粘着シートに付着します。設置位置が高すぎると作業性が悪く、逆に低すぎると台車などで引っ掛けたりぶつかったりしてしまうので注意が必要です。120cm~180cmほどを目安として設置します。

青白い光は、昆虫を誘引することになるので、工場の外から見える場所に設置すると、昆虫が寄ってくることになるので注意が必要です。屋外から見えないように設置をします。また、製造ライン上、製造ラインの近くには設置をしないようにし、ライトトラップの下にも物(とくに食品原材料や製品等)を置かないようにします。

粘着式トラップ

粘着性トラップは、床に置くタイプのトラップで、歩行性昆虫を対象としたモニタリングで活用されます。昆虫を誘引する物質を取り付けているわけではないので、昆虫全般が偶発的な捕獲されることになります。

フェロモントラップ

フェロモントラップは、性フェロモンや食品誘引物質を用いたトラップです。タバコシバンムシやメイガなど、対象とする害虫の専用のトラップがあります。誘引効果は低減するので、誘引効果維持ために定期的な交換を行います。

対策

侵入箇所の除去

出入り口を開けっぱなしにしない、排気口に網をつける、扉やシャッターに隙間が無いようにします。

原材料、包装偉材

網包装資材にカビを餌とするチャタテムシが付着している場合があります。原材料の外装、包装資材などを受け入れる時には外観のチェックを行います。また、外装の付着物はエアーを吹きかけて飛ばしたり、吸引機で吸い込みなどを行うとよいでしょう。

穀類の加工品には、タバコシバンムシやコクヌストモドキなどの貯穀害虫が混入している可能性があります。

天井裏からの侵入

天井裏に入り込んだ虫が、その下の製造エリアに侵入することがあります。隙間をふさぎ侵入を防止します。

誘引源の管理

誘引源となる光の管理として、

  • 光源の管理として、昆虫が反応する波長の光を発しない防虫タイプの照明を使用する、あるいはフィルムを貼る
  • 窓に昆虫が反応する波長の光をカットするフィルムを貼る
  • 昆虫が反応する光をカットする防虫カーテンの使用する

昆虫が反応する光をカットする防虫カーテンは、黄色のカーテンで、これを通った光は虫の眼には見えない光となります。

臭気の管理として、ゴミ置き場は工場建屋の近くに設置されていると、工場の近くまで虫を誘引していることになる。

発生源の除去

工場内の発生源の除去は、清掃によって餌となる食品残渣を取り除くことが基本となります。

清掃は、毎日行う日常的な清掃と、定期的な清掃に分けられます。すべての場所を毎日清掃することができればよいかもしれませんが、あらゆる個所を毎日清掃するのは難しいでしょう。

防虫の観点ではそれが必ずしも必要ない箇所もあります。防虫の観点から、たとえば1週間に1回などの頻度を定めて清掃を行います。貯穀害虫であれば1か月で卵から成虫に育つという生活史があります。この期間内に清掃を行うことで、害虫の発生、成虫となるのを予防する効果があります。

工場建屋外の発生源としては、発生源となりうる以下のものが無いようにします。水たまり、排水溝に溜まった落ち葉や汚れ、腐った樹木、伸びた草、廃棄物置き場の汚れなどです。

防虫防鼠プログラム

自社の防虫防鼠対策についてプログラムの作成しまとめておくのがよいでしょう。内容は以下のようなものになります。

  • 委託先 防虫会社について
  • 防虫会社によるモニタリングと、是正処置
  • 設置している防虫トラップの種類や位置
  • モニタリングの頻度や方法
  • モニタリングの結果を受けての是正処置方法
  • 侵入・発生の防止方法
  • 被害を受けた原材料や製品の取り扱い方法

プログラム通りの防虫防鼠対策を継続的に実施していきます。

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