食品への異物混入の中でもっとも力を入れて防がなくてはならないものは、ガラス片やプラスチック片、石、砂利など、消費者の口内をケガさせたり、歯を欠けさせたりするような異物だ。この記事では石や砂利の混入を防ぐためにやるべきことを書いていきたいと思う。
使用原材料への石混入のリスク
注意を払うべきことは、使用する原材料への石混入のリスクだ。
製造品への石混入の経路としては、食品工場の床に石が転がっていて、それが製造している食品に混入してしまう可能性は低い。また、まれに原材料や資材の梱包ケースに石が乗って入庫されることがあるが、それは入庫時のチェックで除去することができる。
一番問題なのが、原材料の中に石が混ざってしまっていることに気がつかず、それをそのまま使用してしまい、自社の製造品の中に石が混入してしまうことだ。
自社工場内にX線検査機を持っている会社であれば、工程の最終段階で製品に石が混入していないかチェックをすることができるが、中小・零細企業ではX線検査機の無いことが少なくないだろう。そういう会社は、石の混入している可能性のある原材料をできれば使用しないこと、もし使用するにしても石混入の対策管理を行っているメーカーの原材料を使用することだ。
石の混入リスクのある原材料は、農産物そのままか、また石の除去工程の無しで製造された原材料だ。石が混入している農作物をカットして包装しただけのものであれば、そのまま石が混入したままだろう。しかし、石が混入している農作物を煮て、ペースト状にこしたものであれば、その製造過程で石がこし機に引っかかり、原材料には混入していないだろうとわかる。
商品設計で使用原材料を選ぶときに、石混入のリスク、つまり石が混入しやすい農作物かどうか、また、原材料の製造工程で石の除去ができているかどうかを確認するとよい。そのために知っておいたほうが良いこと、食品原材料を選ぶときには、事前に確認しておいた方がよい点についてまとめた。まったく新しい原材料をこれから選んで使用する時は、これらの点を気にすると良いと思う。
農作物収穫時の石混入リスクを確認する
農産物の収穫時に石が紛れ込むか
収穫時に農産物が地面にしてしまうものや地面に落として収穫するような農作物には石が混ざりやすい。例えば、ナッツなどは、樹木の下にシートをセットし、木を揺らして実を落とす。ふつうはシートに落ちるのであるが、シートの外にこぼれるものもあるかもしれない。収穫中にまざってしまう可能性もある。
また、地べたで天日干しするような農産物にも石が混入しやすい。
どのような収穫方法なのかを知れば、農作物に石が混入しやすいかどうかわかり、その作物をつかった加工品に、石が混入する可能性を考えることができる。
石がめり込む農産物か
農産物の皮が厚く硬い方が石がめり込まないので混入しにくい。石が混入しやすい農作物として、イチジクがある。イチジクは熟すと果実のお尻部分の皮が割れ、そして地面に落下する。そこに石がめり込んでしまうことがある。固い皮がある農産物であれば、石が農作物にめり込まないか、めり込みにくい。
原材料メーカーの製造工程での石混入除去対策を確認する
原材料メーカーでの製造工程について考えてみたい。石を除去することができる工程があるか、その工程の除去がどのように行われるのかを確認したい。
石が除去されるような洗浄工程があるか
農産物を加工する前には、洗浄の工程が入るはず。どのような洗浄工程であるか確認しよう。原料農産物と石が一緒になって、原材料の製造会社の工場に入っても、洗浄工程があれば石が除去されやすい。ただし、イチジクの様に石が果実にめり込んでいると、洗浄しても石は除去されない。
皮をむくか
厚い皮をむくような工程があれば、多少農産物に石がのめり込んでいたとしても、その工程で気が付き、除去することができる。仮にバナナと一緒に石が混在していても、厚い皮を向いて実を取り分ける工程で、石とは別になるので、バナナカット製品に石が混入していることは考えにくい。
篩い工程があるか
例えば、3cmほどの農作物があったとする。これを2cm穴の篩いを通過させた場合、石が混入していても2cmより小さい石であれば除去されるのである。ただしこれも、石が果実にめり込んでいると除去されない。
細かいフィルタを通っているか
液状のもの、ペースト状のものは、製造工程で細かいフィルタを通ることがほとんどである。よって原料農作物に石が混入していてもそこで除去される。粉状のものも細かいメッシュで篩いにかけられるので、最終的に石が混入している心配は少ない。
目視のチェック
カットをして1cmほどになった農作物を0.5cmの穴のある篩にかけても、石が0.5cmよりも大きくいと除去されずにカットされた農作物と一緒になってしまう。
確実に除去できる方法ではないが、ひとが見てチェックする目視工程も石の除去に役立つ。何人によってどのようにチェックされているか。また、ずっと見ていると集中力が切れてくるので、それを防止する工夫をしているか(たとえば、何時間ごとで点検者を交代する等)など確認する。
X線検査機を使用しているか
検出機の設定にもよるが、ある程度のサイズがある石であれば除去される。たとえば、イチジクのように石が混入しやすい農作物を加工するのであれば、X線検査機は必須である。X線検査機を使用していないイチジクの加工品を自社で原材料として使い、製品を製造・販売し、また自社にもX線検査機が無いとすると、石の混入のクレームが多発することになるだろう。
ある自社製品で石の混入クレームが連続して発生してしまったことがあり、混入経路は、原材料由来であるだろうと考えられた。石が混入しそうだなと考えられる原材料は、いくつかあった。原材料メーカーに依頼して、メーカーの製造工程上にあるX線検査機で石が検知できるかどうか調べてもらったら、1~2㎜の石は除去できたり、できなかったりであったが、5mm程度であれば除去できるようであった。
ある原材料のメーカーの製造工程には、X線検査機のチェック工程がなかった。自社でもX線検査機は持っていなかったので、「この原材料に石が混入していたのだろう」と目星はついていたが、自社において原材料を使用する前にその中から石を発見することはできなかった。
その製品は1シーズンだけ販売するものであったので、しばらくして製造は終了した。
また次の年に販売することが決まったのだが、そのときには石が混入していたであろう原材料は、前年と同じメーカーのものを使用するのをやめ、他のメーカーのものにした。X線検査機でのチェック工程を経て製造された原材料をつかうようにした。すると、その年は石の混入クレームが一切なくなったのであった。
製造会社の品質管理レベル
製造工場の場所はどこか
日本の消費者は、異物混入に関して世界の中でもとくに厳しい目を持っているので、必然的に日本で商売をしている食品メーカーは、異物混入防止をするための管理を高いレベルで求められる。海外の製造工場では、その国内での異物混入に対する意識が弱く、管理レベルも低いことがあるだろう。
そのため、原材料をつくっている工場が、日本にあるのか、海外にあるのか。海外の工場の場合でも、日本の会社の管理があるかによって、工場の異物混入対策の管理レベルは変わってくるはずだ。新興国にある現地会社の工場で生産した原材料よりも、新興国にある日本会社の工場で生産された原材料の方が、石だけの話ではなく異物混入の可能性は低いと考える。
海外がぜったいに悪いということではないが、異物混入防止(その他品質)のための管理レベルは、一般的には下記のようになるだろう。
日本にある工場 >日本の管理下にある海外の工場 >日本の管理下にない海外の工場
製造工場の品質管理レベル
ただし、日本にある工場であってもずさんな管理の工場も存在はする。自社で新しい原材料を使って商品を開発する際には、原材料への異物混入リスクについて検討した上で採用するようにしたい。開発担当はそういった点には目が向かないかもしれないので、品質管理から情報を提供するとよい。
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