品質管理の究極の目標について考える

品質管理

品質管理の究極の目標は、品質管理の仕事を無くすことではないかと考えている。

メーカーでの仕事を見てみると、「モノを設計したり・つくったり・売ったりする仕事」と、「品質管理の仕事」との大きな違いは、私が思うに、前者はゼロからプラスを積み上げていく仕事であるのに対して、後者はマイナスをゼロにする仕事であることだ。

ゼロをプラスにする仕事

営業や商品開発がすることは、新しい仕事を獲得し、製品を開発することだ。

仕事の成果を測るときには、何件その仕事が達成できたか、0から出発して1、2、3…と数字を積み上げていくことになる。「お客様と商談を重ねた末、新しい商品を開発することが決まった」、「新商品の設計図を書き、量産体制にのせることができた」といった具合だ。これは数字が増えれば増えるほど評価されるので、プラス側に測っていることがわかる。

マイナスをゼロにする仕事

一方、品質管理の仕事で、たとえばクレーム対応のことを考えてみる。

クレームは発生するごとに1件、2件と数字が増えていく。これは、数字が増えれば増えるほどダメなのであって、マイナスの評価を受けることになる。クレーム1件、2件と増えていくこの数字は、マイナス側に測っていることになる。

クレーム数に関してはベストなのはクレームがゼロの状態だ。クレーム・ゼロが目指すべきゴールであるといえる。クレームが発生するのはマイナスであり、このマイナスをいかにしてゼロにできるかを考えて実践していくのが、クレームを対応して、クレーム低減させる仕事だ。

その他の品質管理の仕事では、微生物検査はどうだろう。

検査結果で何も問題がないのがベストな状態であって、菌の見られる食品は無いほうがよい。検査結果で菌の見られる食品があるほど、製造工程に問題があるなどマイナス評価となる。これもクレームと同じで、いかにしてマイナスを無くして、菌の発生ゼロ(あるいは基準内)を維持するかが問われる。

工場の監査も同じである。

食品を製造する現場で、衛生的に問題のある箇所はないか、異物混入の可能性のある箇所がないか探し、あれば指摘する。指摘が多数あるのは問題があるということだ。

厳しい監査が行われても指摘が何もないとしたら、衛生的状態を保てているし、異物混入の可能性を無くせていることになる(ただし、ぬるい監査で問題を問題として発見できていないとしたら、それはよい状態ではなく、悪い状態である)。

その他、製造部門で工程の管理ができていないための品質のバラつき、異常事態や失敗の数、機械の故障率なども同じである。

すべて、ゼロであるほうが望ましい。

品質管理が不要となる日

監査担当が厳しい目で見ているにも関わらず、指摘する箇所がまったくないのであれば、それは、現場の当事者だけで、衛生管理を完璧にできているということである。当然これは、もっともベストな状態であるといえる。

商品へ市場からのクレームがまったく無いとしたら、製造工程でクレームの原因をつぶす仕事ができていることになる。

品質管理がつべこべ言わなくても、製造現場の人たちが、全体最適を考えて、正しい方向に向かって仕事ができているとしたら、それは望ましい状態である。しかし、それは簡単にできるものではないので、品質管理担当はルールを策定したり、教育を行ったり、製造現場をけん制したりする仕事をしているわけだ。

その仕事の目的地は、品質管理が現場作業者に向けるような厳しい目を、現場の作業者が自分自身に向けることができるようになることだ。

そこへ行きつくことができれば、品質管理は不要となるのではないか。そしてそれが品質管理にとってもっとも良い状態でもある。つまり、品質管理の究極の目標は、品質管理の仕事を無くすことではないだろうか?

**********

とまあ、これは現実的には相当難しい話だ。製造現場の担当者に限らないが、ひとの心は弱くなることが当然あるので、品質管理担当が、そのひとたちを正しい方向に導く仕事は、今のところ必要である。

飴とムチの外発的な動機づけによって、現場作業者の行動を促しているのであれば、それは、ずっと品質管理担当が飴を与えたり、ムチをふるい続けなくてはならない。

本当に最高な状態なのは、現場作業者が自発的に、食品の品質管理のために必要なことを実践してくことであるから、そのための教育、啓蒙に力を入れていくべきである。品質管理が不要となる日はくるだろうか。

コメント

  1. とも より:

    全従業員をローテーションで品質管理に配置してはどうか? なんて考えた事もありました。

    • foods-qc より:

      コメントありがとうございます。そうですね。全員が品質管理視点を持てるようになるかもしれませんね。

タイトルとURLをコピーしました