パレート図とは、項目ごとの数値(件数や金額など)を算出し、数値の大きい順に棒グラフで並べ、それに累積%の折れ線グラフを組み合わせた図だ。各項目の重要度を把握することができる。
たとえば、各製品の不具合の発生に関する数値をパレート図にすれば、製品の不具合状況を視覚的に理解することができるし、どの製品を優先して改善を行うべきであるかパレート図を参考にして考えることができる。
パレートの法則とパレート図
どんなものごとでも、「全体のごく一部」が「全体の大部分」を生み出していることが多い。その割合は、「ごく一部」が20%、「大部分」が80%程度で、さまざまな事例にあてはめることができる。
これがパレートの法則だ。その割合から、80:20の法則とも呼ばれる。
この法則を表した図がパレート図である。 たとえば、
- 会社の売上と顧客の関係を見ると、売上の80%は、全顧客のうちの20%の顧客からの売上である
- 会社の売上と商品の関係を見ると、売上の80%は、全商品のうち20%の商品の売上で構成されている
- 会社の売上と営業担当の関係を見ると、売上の80%は、全営業担当のうち20%の営業担当が売ったものである
- 製品の不具合とその要因の関係を見ると、ある製品の不具合の80%は、全要因のうち20%の要因から生まれている
身の周りの出来事や問題に関するデータを見てみると、パレートの法則に当てはまることが多々あるのではないだろうか。
中小企業では、会社の売上の大部分を一部の顧客に依存していることが少なくない。それは特定の主力商品に会社の売上を頼っていることになる。特定の営業担当が会社の売り上げを支えていることもあるだろう。
パレート図の作成
年間の製品別売上構成が下の表のような会社があったとする。
製品ごとの売上一覧
品名 | 売上 (百万円) |
% | 累積% |
A | 16 | 32% | 32% |
B | 12 | 24% | 56% |
C | 8 | 16% | 72% |
D | 4 | 8% | 80% |
E | 3 | 6% | 86% |
F | 2 | 4% | 90% |
G | 0.5 | 1% | 91% |
H | 0.5 | 1% | 92% |
I | 0.5 | 1% | 93% |
J | 0.5 | 1% | 94% |
その他 10品 |
3 | 6% | 100% |
合計 | 50 | 100% | – |
ここからパレート図をつくるとこうなる。
上位の主力製品が売り上げの多くを生み出しているのがわかる。
吉田耕作氏の著作「経営のための直観的統計学」におもしろい記述がある。
神様が我々に10本の指を与えてくれたのは、10個を越える問題は同時に考えたり、悩んだりできないということである(10以上は数えられない)。10種類以外の問題は全て当面存在しないと見なし、忘れるべきである。
さらに、片手の指が5本なのは、優先順位をつけて集中的に取り組むのは、その中でも5個程度の問題だということ。
前者を“吉田の両手の法則”、後者を“吉田の片手の法則”と呼ぶとのこと。
問題はたくさんあっても、解決に集中できるのは5つ程度である。上位5位だけ表示し、6位以降は「その他」としてまとめるとわかりやすい。
上位20%に集中する
上のパレート図のような売上構成をもつ会社が、製造工程を見直して不具合を減らす活動を行うとしたら、どこから着手すべきだろうか。当然、上位の製品に対して行うべきだ、となる。このように、もっとも重要なことに集中していくことを、重点指向という。
A製品の製造工程で発生する不具合を減らしたとする。1%でも減らすことができれば大きな効果が見込める。しかし、J製品の不具合発生を1%減らしても、たった数千円の利益となるだけだ。どちらに注力して改善活動を行うべきなのかは明白だ。
実際には、改善の余地があるかどうかも考える必要がある。一番の売り上げているA製品は、改善をやりつくして、もはや不具合発生は減らすところがないレベルまでいっているのであれば、実施しても効果は出てこない。
J製品の問題はどうでもいいわけではないのが、改善の効果は大きくないので、優先順位は低くして、まずはA製品やB製品に時間を使うべきだ。A製品、B製品にはもう効率よく改善できる箇所が残っていないのであれば、次はC製品、D製品はどうかと考えていく。
製品の不具合の話だけでなく、会社に存在する問題の大きさ・種類はさまざまにある。
その中にあっては、あっちの問題・こっちの問題へと目移りしたり、目立つ問題から解決しようとしたり、発生した順に手を付けていってしまいがちだ。しかし、単に目立つ問題だからといって、解決してもほとんど利益に貢献しないようなことに取り組んでも意味がない。まさに労多く益なしである。
全体の中で、重要なことはごくわずかであり、逆に取るに足らないことが大部分を占めている。パレート図を活用して重点指向で仕事をすることを考えよう。
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