商品名や商品紹介文に、果実ではなく香料を使用している場合、その果実を商品名に付けることができるかどうか、について解説します。
レモン香料を用いた製品の表示
果物や野菜の香料を用いる場合、たとえば、レモン香料を使用している製品があった場合、「レモンの○○」といった商品名を付けてもいものでしょうか?また「レモンを使用したおいしい○○です」といったような文言を表示してもよいものでしょうか?
これは、製品にレモンが使用されているかどうかによります。レモンの果肉やレモン果汁が用いられているのであれば、レモンの言葉を用いた商品名や商品紹介文を表示することができます。
しかし、製品にレモンの果肉、レモン果汁は使用されておらず、レモンのようなさわやかな香りのを感じさせる化学的につくられた香料のみを使用している場合に、「レモン」と付けた商品名や商品紹介文を表記すると景品表示法違反になる可能性があります。景品表示法では、消費者に誤認を与えないかどうかで判断します。「レモン○○」という商品名を見た消費者は、「レモンが入っているのだな」と感じるはずで、そうなると消費者が誤認をしていることになります。
使用していない原材料名を商品名につけてよいか?というと、当然ながらつけることはできません。
景品表示法とは、正式名を不当景品類及び不当表示防止法といい、商品やサービスの品質、内容、価格、取引条件などを偽って表示することを制限して、消費者が商品やサービスを自主的かつ合理的に選べるようにする、消費者の利益を保護するための法律です。
景品表示法で、不当な表示としては次のものがあります。
- 優良誤認・・・商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
- 有利誤認・・・商品・サービスの価格、取引条件についての不当表示
- 上記2つの他に、商品・サービスの取引について誤認させるおそれがあり、消費者の自主的・合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
優良誤認には、商品やサービス内容について、一般消費者に対して実際よりも著しく優良であると誤認させる表示、また一般消費者に対して事実に相違して他の競争事業者に係わるものよりも著しく優良であると誤認させる表示、があります。
上記したレモンの例でいうと、レモンの果肉、レモン果汁は使用されておらず、レモン香料のみを使用している場合であれば、製品の品質、規格に関することですから、優良誤認に該当します。
過去に消費者庁表示対策課に聞いた話によると、消費者が誤解する商品名、あるいは消費者の期待と食い違う商品名はダメであり、そうでなければ良い。期待とのズレ”がキーワードとなる。と聞きました。また、とくに何%以上、含有してないとダメだという数字的な基準はないとのことでした。
常識的にどうかで考えることができます。消費者に正直に伝えているか?意図的に、よく見せようとしていないか?です。これを考えると自然と答えが出てきます。次に、意図的ではなくても、消費者に誤認させてしまう可能性がないか考えたいですね。
ただし、この場合は「レモン使用」ではなくて「レモン風味」と表示することは問題ありません。消費者庁の食品表示基準Q&Aの下記のような文書があります。
(加工-210)「レモン風味」と表示する場合、特色のある原材料の表示に該当しますか。また、レモンを使用せず、香料で風味付けをした商品にこのような表示をしてもよいですか。
(答)
1 「レモン風味」のような表示は、レモンの味や香りがするという製品の特徴を一般的名称で表しているものであり 特色のある原材料の表示には該当しません2 また、レモンを使用せず香料で風味付けをした商品に 「レモン風味」と表示することは可能です。この場合 「レモン使用」と表示することは、事実と異なる表示であり、認められません。
3 なお、レモン香料を使用した商品については、原材料名欄又は添加物欄において「レモン香料」や「香料」のように、使用した香料を添加物として表示することが必要です。
参考:消費者庁 食品表示企画課 ”食品表示基準Q&A”
特色のある原材料とは、特色のあることを示す文言を付けることで、一般的な原材料との差別化が図られたもののことです。
同じ種類の原材料に占める割合が100%ではない場合に、「○○使用」や「○○入り」のように「使用した旨」を表示することが、消費者に優良誤認を与えると考えられるものを指します。
消費者庁の食品表示基準Q&Aにあるように、製品にレモンの果肉、レモン果汁を使用せずレモン香料のみを使用したときは、「レモン使用」と表示することはできず、また「レモン○○」という商品名をつけることも、消費者にレモンを使用していると誤認させる可能性があると考えられます。
商品をよりよく見えるようにしてその良さを訴求すること自体がいけないことではありません。法によって制限されているのは、偽って表示をしたり、消費者に誤認をさせることです。
消費者に正直に伝えているか?嘘をついたり、ごまかしてよりよく見せようとしていないか?という点を考えてみるとよいでしょう。また、そのように意図的ではなくても、気づかずに結果として優良誤認となってしまう場合もあります。商品名や商品紹介文が正しいといえる製品であるかをチェックする必要があります。
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