食品工場で使用する原材料に異物混入などの不具合があった場合の対応

原材料が変質していたり、原材料の中に異物が入っていたりしたときには

  • 自社でその原材料を使用禁止にする、すでに使用をしてしまっていたのであれば製品を使用禁止にする
  • 原材料メーカーに連絡して調査したもらったり再発防止対策をとってもらう

といったことをするでしょう。

その原材料と同じ包装や箱は使用禁止とするとしても、他の包装や箱のものは使用するかどうか、という問題があります。

この記事では、ある原材料に不具合が発生したときに、その後の対応として同じ原材料の他の在庫を使用するのか、使用禁止するのであれば、どこまで使用禁止にするか。これらをどのように判断するのか、その考え方を書きます。

重大性と拡散性を評価する

重大性と拡散性を評価し、その2つをもとにして残されている原材料の在庫を使用するかどうかを判断していきます。

重大性

重大性はその不具合がどのようなものなのか、消費者に与える健康被害がどの程度なのかによって評価します。

たとえば、金属の刃の欠片であれば、それを食した消費者は口内をケガしてしまうでしょう。これは重大性が高いといえます。また、包装を開けたら中身が腐敗していた、カビが生えていたといったことも、健康被害が発生する可能性があり重大性があるといえます。

ビニールの切れ端が入っていたとします。それを食した場合には口内のケガのようなことは無いですので、重大性は金属の刃の欠片よりは低くなるでしょう。

拡散性

拡散性は、拡散している範囲がどの程度なのか、あるいは拡散していると可能性がある範囲がどの程度なのかで評価をします。

たとえば、2023年12月9日の製造日の原材料に異物が混入していたとしましょう。

ある一つの包装袋の中に混入していたとします。

その異物から判断して、一つの包装袋の中だけにしか混入していない、他の包装袋には混入していないと断定できるのでれば、拡散性は低いといえます。

しかし、同じ製造日の原材料の複数の包装袋に異物混入があり、広く異物が混入している可能性があるというのであれば、拡散性は高いといえます。

同じ製造日であっても、異なるロットであれば混入はしていないと言えるのであれば、拡散性は上記2つの事例の間にあるといえます。それはたとえば、製造メーカーで1日の中で10回に分けて原材料の混合をしていおり、混合1回分にのみ異物が混入しており、他の9回分には混入していないと言い切れる場合です。

このように言い切って特定をできるかどうかも重要です。原材料の一つの包装のみに発見された場合、ある範囲のみに発生していることを特定できるのか、それとも発生範囲を特定することができないのか、です。特定ができずあやふやであるなら、混入が考えられる範囲は最大限とるようにすべきでしょう。

複数の製造日の原材料に混入していた、となると、広く混入している可能性が出てきて、拡散性が高そうです。

拡散性については製造工程が関わってくることが多いでしょうから、製造メーカーに問い合わせをして回答をもらい、それを判断材料とします。

重大性と拡散性の2軸で考える

重大性と拡散性の2軸で考えてみます。

重大性が高い・拡散性が高い

重大性が高くそれを食した場合の健康被害が大きく、拡散性が高い場合は、安全ではない可能性がある範囲はまず使用禁止とすべきです。どこまで拡散しているのかわからない、ということであれば、その範囲も使用禁止と考えるのがよいでしょう。

重大性が高い・拡散性が低い

重大性が高くそれを食した場合の健康被害は大きいですが、拡散性が低い場合は、重大さも関わりますが、混入の可能性がある範囲をどれだけ特定できるのかで話が変わってくるでしょう。

その異物が混入していると考えられる範囲は使用禁止とすべきですが、ある特定のロットにだけなど狭い範囲で混入していると考えられ、他のロットには混入していないと断定できるのであれば、その狭い範囲以外は使用可能と考えることも検討できます。

金属の欠片が混入していたとしましょう。

実は金属検出機を正しく運用できておらず、金属異物が混入してしまっていた。さらに、どこで発生したのかもよくわかっていない状況であれば、混入の可能性が広くなっています。この場合、その包装や箱だけではなく、同じロット内への拡散性、あるいはもっと広い範囲を使用禁止にすることを検討すべきでしょう。

別の例として、金属の欠片が混入したが、毎日の終業時の点検で、ある日に包丁が欠けていることを確認していたとします。原材料メーカーでは製品をそのまま出荷していた。調査したところ、欠片は金属検出機では検知できないサイズであった。欠片は包丁と一致し、他の欠片は発生していないと考えられた。1日の終業時の清掃や洗浄で工程上の異物は除去されている、といったことであれば、点検で発見した翌日以降には混入はないと言えるかもしれないません。

重大性が低い・拡散性が高い

重大性がなく、拡散性がある場合は、拡散性が高くて他の製品包装内にも混入が多いことが考えられるのであれば、混入が考えられる範囲の原材料は使用しないと判断することが賢明でしょう。

重大性が低い・拡散性が低い

拡散性がなく、拡散性もない場合は、狭い範囲のみを使用禁止にしてたり、あるいは異物であればそれを取り除いて、他の部分は使用ができることも多いでしょう。

たとえば、ドライフルーツに枝などの夾雑物が一つ入っていた場合は、健康被害を与えるものではないですし、一つしか見つかっておらず、拡散性もなさそうだとと判断できるのであれば、そのまま使用するでも問題ないかもしれません。

重大性と拡散性による判断

原材料があったときに、他の原材料の在庫を使用するかどうかの判断は、簡単に考えると以下の表のようになります。

拡散性 高い拡散性 低い
重大性 高い×
使用は難しい

内容によって判断
重大性 低い
内容によって判断

使用できること多い

最後は責任者の判断

重大であり拡散性もある、または、重大ではなく拡散性はない、という場合であれば、判断はしやすいかもしれません。

しかし、重大であるが拡散性はない、重大ではないが拡散性がある、という場合には、それぞれの問題によって、どれだけ重大なのか、どれだけの拡散性があるのか、あるいはどのように拡散しているのかによって判断は変わってくるはずです。

また、製品の製造を一時的に止めることができない、製品はすぐに製造して出荷期限が控えているのようなときには、原材料の調査をするのを待っていることができず、判断をする前に製品の製造を進めてしまうことがあるかもしれません。

ですが最終的に製品を出荷するのかどうかは、納期を判断材料に入れず、重大性や拡散性から考えるべきでしょう。

このような諸々のことを踏まえて、最終的には責任者が判断をすることになります。

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