食品の安全と安心の違い

「安全」と「安心」という言葉。これらの言葉はよくセットで使われるが、その意味することは、似て非なるものだ。

食品業界に関わるひとでも、混同して使っていたり意味がよくわからず使っているひともいるのだが、食品に関わる仕事をしている者であれば、「安全」と「安心」の違いについて把握しておくべきだろうと思う。

安全とは

安全とは食品そのものが、食べても身体に害のなく、問題なく食べることができることだ。食品の中にガラスやプラスチック、石などの危険な異物が入っていないこと、食中毒をおこす微生物が増殖していないことなどである。

安心とは

安心とは食品そのものに関することではなく、消費者の心の問題だ。製造工場では、このような取り組みをしており、食品はこういった製造工程で作られているので、安全なものですよ」と消費者に伝達することで、消費者がこのメーカー食品は安全なのだな、なんの心配もなく食べられるな、と消費者が感じるその心の有り様のことである。

安全と安心は混同されやすい

安全な食品を作ることと、安心を提供するということは、全く別の次元の問題である。よく、安全・安心な・・・と、この2つの言葉はセットとして使われることが多いが、いくら安全に配慮をした製造をして、安全な食品を作ったとしても、そのことを消費者に伝えていなければ、消費者に安心の提供はできていないことになる。

これは、私が仕事をしている食品工場に対して、生産管理のシステムを売り込んできた業者の話だ。

その会社は表示ラベルのプリンターや計量器などを製造販売する会社で、機械だけでなく、生産管理システムおよびソフトウェアも販売していた。そのときの売り込み内容は、計量器を使って食品の原材料を計れば、その原材料のロットの記録が自動で行われる、最後は包装をして表示ラベルを貼るときに、その完成品と使用してた原材料の記録の紐づけが自動でなされるものであったと記憶している。

その営業トークにこのような言葉があった。

「昨今、安全・安心が社会に求められていますので、この商品とシステムを導入することで・・・・」

とりあえず、安全・安心という言葉を使っていたようだった。

提案のあった商品は、使用原材料をトレースして記録するシステムだったが、使用原材料や製造の完全な記録ができていることがイコール安全に結びつくものではない。

製造工程でガラスやプラスチックなど異物を混入させないことや、微生物を増殖させないようにすることが、食品を安全にするのであって、製造の記録をとって後でトレースできるようにすることは、食品の安全とは関係が無いのである。

製造の記録、トレースは、その食品になにか問題があったときに、記録をたどって確認して販売を中止したりするときに使えるものであり、どちらかというと安心を与えるものである。

当たり前の品質としての安全

安全が損なわれた食品が世に出回り、もし万が一消費者に被害が及んでしまったならば、それは消費者に健康上の悪影響を与えるだけでなく、企業存続に関わる大きな問題になる。

食中毒になった、金属が食品の中に入っていて口内にケガをした、ということが発生した製品を提供した企業、あるいは店舗からは、すぐに消費者が離れていく。

またその事故への対応、消費者への対応で、消費者の心配を取り除くような対策を提言し、実行できなければ、たった一つの食品事故で、売り上げが激減したり、最悪、倒産するということもありえる。現に食中毒の事故を起こし、倒産に追いやられた飲食チェーンの会社もある。食品会社は、当たり前である食品の安全を確保し、さらにその安全を消費者がわかるように伝えて、安心を感じてもらえるように努めなくてはならない。