食品の微生物制御方法とハードル理論

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食品の微生物を制御する方法は、そのメカニズムが解明されてはいなかっただろうけれども、大昔から人間が活用してきている。

通常は、意識するしないにせよ、ひとつの食品に対して複数の制御方法が用いられて、食品は安全な状態に保たれているだろう。その制御方法は様々なものがある。

食品の微生物を制御する方法

冷蔵・冷凍する

「0℃~10℃」での保存が冷蔵保存

「-15℃以下」での保存が冷凍保存

である。

常温帯で保存するよりも、低温帯で保存したほうが、微生物の増殖を抑えることができる。

冷蔵保管することによって微生物の増殖はかなり抑えられる。しかし、完全に増殖を抑えられるわけではないし、低温性の腐敗菌は増殖するので、生鮮食品などは早く消費すべきではある。

さらに温度を下げて冷凍保管した場合には、微生物は増殖できなくなる。ただ、大部分の細菌は完全に死滅するのではなく、温度が上がればまた活動が始まるので、解凍後の保管管理に気をつかわなくてはいけない。

また、解凍後は筋束がゆるみ結締組織が傷ついているので、微生物が増殖したときには、早く腐敗するようになってしまう。

乾燥させる

食品中の水には、食品成分と結合した「結合水」と成分とは結合していない「自由水」がある。

微生物が利用できるのは後者の自由水で、食品中の自由水の割合のことを水分活性という。水分活性の値は0~1.00の間の数値で表され、これが大きいほど微生物は増殖しやすくなる。

ほとんどの細菌は水分活性値0.90以下では増殖できない。ふつうのカビは水分活性値0.80程度以下で増殖できなくなり、耐乾性のカビでも0.60以下になると、増殖できなくなる。水分活性値0.50以下になると大部分の微生物は増殖できなくなる。

脱水・乾燥をさせて、食品の水分活性を低下させることが、微生物の制御の手段になるのだ。

煮干しや干しブドウのように、天日干し、陰干しなど自然に乾燥させる方法

フリーズドライ食品など、人工的に冷凍、乾燥させる方法

がある。

加熱する

食品を加熱することで、微生物を殺菌する方法である。微生物によって、死滅させるための温度・時間が異なるので、対象微生物の耐熱性や食品成分の変質を考慮しながら、加熱温度と時間を設定する。

食品添加物をつかう

保存性を高めるための食品添加物を食品に添加することで、微生物の増殖を抑制する。殺菌剤、保存料、日持ち向上剤などだ。

殺菌剤には、野菜や果実の殺菌に使われる亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、

保存料には、ソルビン酸カリウム、しらこたん白抽出物、

日持ち向上剤には、グリシン、酢酸

といったものがある。

食塩や砂糖を加える

食品に食塩や砂糖を加えることで保存性を高める方法である(塩蔵、糖蔵)。野菜の漬物、果物のジャムなどがそうだ。

食品の水分活性が低下するので、微生物が生育しにくくなる。たとえば、ジャムは水分活性0.80程度である。

真空包装

空気を遮断する包装容器に食品を入れて、空気を吸引し除去して封をする。包装容器内に酸素がなくなるので、増殖に酸素を必要とする好気性菌の増殖を抑えることができる。

窒素や炭酸ガス置換の包装、脱酸素剤の使用によっても、包装容器内の酸素を無くすことができるので、同じ効果が期待できる。

ハードル理論とは

いくつかの制御方法を組み合わせて、微生物の増殖を制御する方法をハードル理論という。

食品工場では、実際には上記した微生物制御方法のどれかひとつだけを使うのではなく、いくつかの方法を組み合わせて食品がつくられるのがほとんどだろう。

食品の中にいる様々な微生物は、それぞれの微生物が耐えられる加熱温度・時間など、増殖しやすい環境などが異なるので、ひとつだけの微生物制御方法で、すべての微生物の増殖を抑えようとするのは難しい。

ひとつの制御方法をすり抜けて生き延びた微生物がいても、いくつかの制御方法がハードルのように微生物の前に立ちはだかり、微生物を抑えていく。

このハードルの数が多いほど、最後まで生き残れる微生物が少なくなる。

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