毛髪の知識と毛髪混入の防止対策の基本

毛髪

食品工場において、製造中の食品に混入しうる毛は、毛髪、まつ毛、眉毛、腕や手の毛となる。これらが、落下して食品の中に落ちて、そのままパッケージされて、消費者のもとへ運ばれることで、毛髪混入が発生する。

この記事は、悩ましいこの問題を抱える方に向けてのものだ。食品への毛髪混入を防いでいくために、知っておくべき毛髪についての基本的な知識、それから食品の毛髪混入の対策についてまとめた。

毛髪に関するの基本的な知識

毛髪は伸びたり、伸びるのを休んだりを繰り返す

まず、毛髪の成長について。

毛髪に限らず、ひとの毛はずっと伸び続けているのではなく、毛が抜け落ちてそのまま毛穴に毛が無い状態の時期もある。そしてしばらくするとまた毛が生えてくる。つまり、毛の伸長には周期があるのだ。

  • 毛が伸びている時期を「成長期」
  • 毛が抜け始める時期を「退行期」
  • 毛が生えていない時期を「休止期」

という。毛髪は、1日に0.35mm伸びるといわれていて、1ヵ月では約1cm伸びる。

成長期の期間の長さは3年から7年程度。そのあと退行期(2~3週間)を経過すると毛が抜け落ちる。3年であれば36cm、7年で84cmまでは伸びることになる。

これを考えると、毛髪の伸びるスピードが普通のひとは、どうがんばっても1m(100cm)以上は、毛髪を伸ばすことができない。まったく髪を切らずに残していても、1mの長さになる前に成長期が終わって、毛は抜け落ちてしまう。

1日に抜ける本数

ひとの頭髪には、おおよそ10万本の毛髪が生えている。短くて3年(1095日)、長くて7年(2556日(うるう年1年))で成長期が終わるのだから、理論的には次のようになる。

  •  3年(1095日)かけて10万本が抜けて、また生えてくるとすると、10万本÷1095日=91.32本 ・・・1日あたり91本が抜ける
  •  7年(2555日)かけて10万本が抜けて、また生えてくるとすると、10万本÷2555日=31.12本・・・1日あたり31本が抜けて落ちる
  •  つまり、1日、31本~91本の頭髪が抜け落ちる

この範囲は、当然ひとによって差があるということになる。

日本毛根抜け毛研究会のサイトに記載されている検証結果によると、1日50本抜けるひともいれば、250本抜けるひともいたようだ。季節によっても変わってくる。このサイトはかなりすごい。理髪師が自分を実験材料として、1日どれだけ毛髪が抜けるのか、詳細なデータが掲載されているのだ。

 日本毛根抜け毛研究会

シャンプーは排水口に網を付けた流しで行ったり、睡眠中や仕事中には、キャップをかぶるなどして、採取をしたようで、それを毎日!続けている。こういう地道に集めたデータほど面白いものはないと思う。

頭髪は1日の中でいつ抜けるのか?

日本毛根抜け毛研究会のサイトに記載された情報を転載したい。1日の生活の中で頭髪が抜けるタイミングは、次のようになっている。

  • シャンプーのとき 7割
  • タオルでふく 1割強
  • ドライヤーをかける 1割強

毛髪が食品に混入するまでの流れ

食品への毛髪混入対策について考えてみたい。毛髪が食品に混入してしまうまでの流れを見てみる。

まず、根源的な毛髪の生えたひとがこの世に存在し、食品工場という食品をつくる場に、毛髪を有したひとが来て、食品づくりをすることから始まる。そして食品への混入経路を考えると、こうなる。

  • ひとが食品工場の建屋に毛を持ち込む
  • 製造エリアに入って毛を持ち込む
  • 製造エリアで作業中に頭髪などが食品に落下する
  • また、いったんは製造エリアに落ちたものが、空気中に舞って食品へと混入する

これらの混入経路から、それに対して対策を考えていく。

対策としてはこうだ。

  • 従業員の毛をできる限り無くす
  • 工場建屋に毛髪を持ち込ませない
  • 製造エリアに毛髪を持ち込ませない
  • 製造エリアで従業員の毛髪を落下させない
  • 落下させた毛をそのままにしない

毛髪混入の対策

従業員の毛をできる限り無くす

これは暴論であるが、そもそも剃るなり脱毛するなりして、毛を無くしてしまえば、もっとも根本的な原因を消滅させることができる。

従業員が自宅でくつろいでいるときに、家族の毛髪がその従業員の服についてしまい、そのまま出社して上に作業服を来て、工場に持ち込んでしまうこともあるだろうし、仕入れた原材料の中に混入してしまっている場合もあるだろうが、食品への毛髪混入は激減するだろう。

しかし、これを会社のルールとしてしまうと、従業員の人間としての尊厳を奪うようなことになるので現実的ではないし、「頭も眉毛もツルツルにしておくこと」が就業規則となれば、だれもその会社に勤めようとしない。

ただ、腕や手の毛であれば剃ったり脱毛するのは、いいのでないか?とは思う。

男性の腕や、手の甲、指の第2関節と第3関節の間部分には、少なからず毛が生えているひとが多い。食品製造の作業ではふつう手袋を着用するが、ちょうど服の袖口と手袋の間部分が露出してしまったり、扱う食品によっては、手袋をせず素手でおこなう作業もある。

1cm程度の毛が食品に混入していたとクレームを受けたことがある。これは、腕の毛、手の毛が食品に混入した可能性も考えられるだろう。

ところで、私自身の片手に存在する毛を数えてみると、目にはっきり見えるもので、約370本の毛が生えていた。(手の甲には230本程度、指の第2関節から第3関節の間には140本程度)

作業中に抜け落ちたり、すぐに落ちなくても作業服の手首部分に付着したままなることもあるだろう。また、作業手袋の中で抜けていても、作業手袋交換時に手袋の外に出てくるかもしれない。

工場建屋に毛髪を持ち込ませない

正確には、従業員が抜けた毛を自宅から工場に持ってこないようにするということだ。

・頭髪の中にとどまっている毛を自宅で取り除いてきてもらう

ブラッシングをすると、ブラシには毛がまとわりついてくるだろう。これは、もともと抜けやすくなっていた毛すでに抜けていた毛で頭髪の中にとどまっていたものだと思われる。出社前にはブラッシングをかけてくること。また、洗髪でもよい。

従業員がそれを行っているかどうかチェックするのは難しいが、これを行うかどうかで工場建屋に持ち込まれる毛の量に大きな違いが出るだろう。

・部屋をきれいにしてもらう

従業員に部屋をきれいにしてもらうことだ。掃除機をつかうとわからないが、コロコロローラーやワイパーを使って部屋の掃除をすると、少々驚くほど多くの毛髪が床に落ちていることがわかる。

ずっと何日も部屋を掃除しないひとがいたとしたら、そのひとの部屋には無数の毛髪がころがっていることになる。当然、そのひとの服やらカバンにやらも毛髪が付着し、そのまま食品工場に出社してくる可能性が高くなる。

このあたりは、労働時間外のプライベートな時間のことになるので、強制はできないと思うし、チェックもできない。しかし依頼はすべきだろう。

製造エリアに毛髪を持ち込ませない

毛髪なくして、工場にやってくることができた。次は、製造エリアに毛髪を持ち込ませないことだ。

まず作業服に着替える時。

・私服と作業服を接触させない

私服で工場に来た従業員は、更衣室で作業服に着替えるときの話だ。私服は従業員の自宅で毛が付着してきているかもしれない。一方の作業服はクリーニング済の服であり、毛髪の付着は少ないだろう。

これから着替える作業服に私服を接触させないようにしよう。できれば、私服を入れるロッカー、作業服を入れるロッカーが別にあるとよい。ちなみに、これは毛髪以外の異物への対応になる。

・ブラッシングをする

自宅でブラッシングをしてきてもらったうえで、作業服に着替える前に再度ブラッシングをする。

製造エリア入室する前

・工場に入る前にローラー掛けを行う

作業服の上からローラー掛けを行う。ローラー掛けする時間や、ローラーのかけ方などをルール決めして、従業員に伝達する。ローラー掛けする時間は、タイマーをセットするとよい。

・エアーシャワー

工場の入口に設置している会社が多いかと思う。

製造エリアで従業員の毛髪を落下させない

作業服には、毛髪の付着が無い状態で製造エリアへ入ることができた。しかし、作業をしている間に、帽子から毛髪がはみ出してくることがある。

まず、毛髪がはみ出にくい作業帽子を選ぶことだ。作業帽子も種類は様々にあるので、サンプルを取り寄せて確認してみよう。

また、各従業員には合ったサイズを使用してもらうこと。小さなサイズを使用すると、モミアゲ部分を覆うのに余裕がなくなって、毛が露出しやすい。

作業中の従業員の帽子から毛髪が出ていないか、数時間ごとなど時間を決めて確認をする。

落下させた毛をそのままにしない

風が吹くことで、毛髪は中に舞う。強い風を送り出している空調機があると、毛髪が宙に舞ってしまうこともあるだろう。日ごろからへ製造エリアの清掃を隅まで行い、床に落ちている毛髪をできる限り減らすことだ。

まとめ

このように毛髪混入対策には、これをすれば絶対に毛髪混入が無くなるというような特効薬は無い。

会社に出勤してくるときに持ち込まないこと、製造エリアの中に持ち込まないこと、作業服や帽子から出さないようにすること、製造エリア内に落ちてしまった毛髪をそのままにしないこと。あらゆる箇所での対策を複合的に組み合わせて、毛髪混入を減らしていく。

毛髪の成長サイクルや毛根のつくりなどの基礎知識は、次のような本で知ることができる。

 

 

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