「かつや」感謝祭の安い特別価格は赤字覚悟?

飲食店

2016年12月2日~4日の3日間、 特定の4品を500円で提供する年末感謝祭が実施されている。

この記事では、かつやの感謝祭は出血大サービスなのかどうかを書いた。直接取材をしたわけではなく(したくてもできないが)、損益計算書から読み取れることを記事にしたということはご承知いただきたい。

感謝祭のメニュー内容

この年末感謝祭の対象となるメニュー内容は次の通りだ。

  • カツ丼(竹)750円(税抜き)
  • ロースカツ定食690円(税抜き)
  • カツカレー(竹)690円(税抜き)
  • ソースカツ丼(竹)650円(税抜き)

カツ丼一杯を500円で売ったときの営業利益はマイナス

会社の2015年度末の損益計算書から、カツ丼一杯の利益を推測してみよう。

損益計算書を見る

「かつや」は、アークランドサービスホールディングス株式会社の子会社である「株式会社かつや」が運営している。アークランドサービスホールディングス株式会社の2015年の損益計算書を見ると、次のようになっている。

  • 売上19,837百万円
  • 売上原価9,614百万円
  • 販売費及び一般管理費 7,444百万円
  • 営業利益2,778百万円

ただし、これはアークランドサービスホールディングス株式会社としての損益計算書だ。かつやの他に、グループ事業として子会社が「岡むら屋」「からやま」など5業態の飲食店を運営していて、それらをすべてをまとめたものである。

とはいっても、全体の売り上げのうち90.3%がかつやの売り上げとなっているので、原価率や利益率などは、かつやのものに近いだろうと推測する。アークランドサービスホールディングス株式会社の数字に90.3%を掛けたものを、かつやの売上や利益と仮にしてみる。

かつやの推定売上と利益

かつやの売上高、原価、販売費及び一般管理費、営業利益を、アークランドサービスホールディングス株式会社の90.3%と推定すれば、次のようになる。

  • 売上17,913百万円
  • 売上原価8,681百万円
  • 販売費及び一般管理費 6,722百万円
  • 営業利益2,509百万円

カツ丼一杯の利益は105円

営業利益率は14.0%である。これを商品ひとつあたりの営業利益は、商品価格に0.14を掛けて出てきた数値だ。カツ丼(竹)790円に0.14を掛ければ、105円。これがカツ丼(竹)一杯の営業利益である。

ちなみに原価率は48.46%なので363円だ。

感謝祭メニューの料金は、通常よりも190円~250円下げている。通常の価格のうち、97円~105円が営業利益分であるので、価格を190円~250円下げれば営業利益はマイナスとなってしまう。損失として小さくはないだろう。

カツ丼(竹)ならば、750円のうち105円が営業利益分であり、250円安くして提供すると、145円分が赤字になってしまう。

ロースカツ定食ならば、690円のうち97円が営業利益分であり、190円安くして提供すると、93円分が赤字となる。

感謝祭1日の赤字金額

まず、店舗数を確認すると、2015年度末で340店舗が存在していることがわかった。そして1店舗あたりの年間売上は平均52,685,294円だ。1日あたり144,343円の売上で、客単価を800円とすると、1日180人の来客がある。感謝祭の日は、通常よりも来客数が多いかもしれないが、はっきりわからないので平均の180人で話を進めていく。

感謝祭で提供されるのは、

  • もともとは750円で105円が営業利益分の品が1つ
  • もともとは690円で97円が営業利益分の品が3つ

で計4品提供で、これらを従来の価格から値下げして500円で販売すると、

  • 145円赤字の品が1つ
  • 93円赤字の品が3つ

となる。

1品 3品
通常価格 750円 690円
通常時の営業利益 105円 97円
感謝祭価格 500円 500円
感謝祭時の赤字額 145円 93円

均等に注文があるとしたら、前者1品に45の注文、後者3品に135の注文があるので、赤字の合計金額は、

145円×45+93円×135=19,080円

1日19,080円の赤字となってしまう。340店舗で合計すれば6,487,200円である(店舗により一部取り扱いの無い場合があるとのことなので、実施店舗数はいくらか少ないかもしれないが340店舗で計算)。

かつやのメリットと赤字金額を抑える工夫

感謝祭として顧客に対して通常よりも安く提供しているわけであるが、かつやにとってもメリットはあるだろう。多くの顧客に来てもらって、次の来店につなげる意味があるだろうし、赤字金額を補てんできるものではないかもしれないが、そのほかのメリットもある。

この感謝祭期間中に提供される4品で使用しているメイン食材は、いずれも120gのロースカツのみである。料金を値引きするのは4品だけで、しかも120gロースを使用する商品だけに絞ったのには意味がある。

かつやではふだんの商品数は20程度であるが、感謝祭の3日間は4品のみとなる。よって、ほかのサイズのロースカツ、メンチカツ、エビや牡蠣、その他の食材も3日分は仕入れる必要がなくなる。メイン食材としては120gのロースカツをのみを仕入れることになる。

すると、かつやにとっては

  • ロースカツを安く仕入れることができる
  • 管理が楽になる

といったメリットが生まれる。

ロースカツを安く仕入れられる

120gロースの使用だけになるので、仕入れ業者に注文する120gロースの数量が普段の何倍にもなるだろう。一括で大量に仕入れることで、仕入れ価格を下げることができるはずだ。簡易的ではあるが計算してみよう。あくまで推測ではあるが大きくは外れていないはずである。

通常時の1日のロース120gの使用量

1日1店舗あたりに180人の来客がある。通常であれば180人の注文は20の商品に分散している。どれが人気があるのかはわからないので、各商品に均一に注文があると仮定すると、それぞれの商品への注文数は9になる。

20品の中で120gのロースカツをつかった品は5つだ。これら5つの品への注文は1日45人からある。

通常時の120gロースカツ使用量は、1日に45枚であると推測する。

感謝祭時の1日のロース120gの使用量

感謝祭のときには、180人の注文がすべてロースカツ120gをつかった注文になるのだから、ロースカツ120gの使用量は、1日180枚だ。

通常時と感謝祭時の差異

ロースカツ120gの使用量は、普段は1日45枚、感謝祭のときは1日180枚と4倍になるのだ。仕入れ業者へ出すロースカツ120gの発注数も普段の4倍になる。

これを会社全体340店舗で考えれば、通常時は15,300枚に対して、感謝祭時は61,200枚となる。3日間で考えれば、45,900枚と183,600枚の違いとなる。

この仕入れ量の増加によって、販売価格を下げた分の190円~250円を補てん、最低でも赤字分の93円~145円を補てんできればよいのだがどうだろうか。

仕入れ先

それで仕入れ先はどこなのかというと、アークランドサービスホールディングス株式会社の子会社であるアークランドマルハミート株式会社から仕入れている。つまり、ロースカツ120gを製造しているアークランドマルハミート株式会社は、おそらくロース肉のブロックを仕入れてきて加工していると思うが、この仕入れ量が4倍となり、安く仕入れられるはずだ。

ただ、安く仕入れられるとはいっても、感謝祭の赤字金額を補てんできるほどに安く仕入れることはできないかもしれない。

ロースのブロックが、1kgあたり1,000円だとしても、120gでは120円。これを1割、2割安く仕入れることができたとしても、1食あたり10~20円程度の原価低減である。カツ丼(竹)一杯の赤字分となる145円には及ばないのである。

赤字覚悟で、感謝祭を行っているのかもしれない。

逆に、ロースのかたまりを安く仕入れることができる機会があったときに、感謝祭で120gのロースをつかったメニューだけを出すというほうが良いと思える。

食材管理や調理が楽になる

感謝祭の期間に扱うものはロース120gのみとなるので、食材の管理が非常に楽になる。

1店舗あたり1日の来客数は180人ほどであるので、1日180人が来店し、20品ほどの中からあれやこれやと注文をもらうことになるのが通常時だが、この感謝祭時には非常に調理もしやすくなるだろう。

この感謝祭の時期は、4品のみの扱いなので新人の教育をするにもやりやすいのではないだろうか。

まとめ

上記以外にも、原材料を安く仕入れる方法はあるだろうが、普段750円や690円で販売している品を、500円で販売するのは、やはり多少なりの赤字が出るのではないだろうか。

感謝祭とはかつやが顧客に感謝する意味だが、顧客である私たちがかつやに感謝をしたくなってくる。感謝祭で500円の品を食べて、そしてその後もかつやに行こうではないか。

12月5日からは味噌カツを食べられるようなのでそれもいいし、週1回かつやに行っている私としては、おろしカツ定食をおススメしたい。

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