原材料には保存温度と賞味期限が設定されているが、原材料の包装を開封した後では、その保管温度や使用期限は変わる。未開封の状態と同じように保管してそのまま使用するこはできなくなることが多い。
食品メーカーでは、原材料ごとに開封後の保管温度や使用期限を設定する必要がある。
この記事では、開封後の原材料の保管温度や使用期限をどのように設定するか解説する。
原材料の開封後期限の設定方法
原材料の開封後期限、保管温度は、以下を参考にして設定する。
- メーカーの指定、見解
- 原材料の物性や包装形態
- 自社での検査の結果
メーカーの指定、見解
メーカーから取り寄せた原材料の商品規格書・仕様書に、開封後の取り扱いについて記載ある場合は、それに従うのがよいだろう。しかし、多くのメーカーでは、「開封後はお早目にご使用ください」といった指定があり、開封後の期限を保証していない。これは開封後に関しては保証できないことを意味する。
となると自分たちで設定をすることを考えるが、その前にメーカーに問い合わせしてみるのもよい。保証することを求めるのではなくて参考情報として問い合わせする程度であれば、メーカーから情報提供してもらえる可能性がある。メーカーのこれまでの経験で言えることがないか、検査した記録によって言えることがないか問い合わせしてみるのもよいだろう。
原材料の物性や包装形態
次に、原材料の物性や包装形態から判断できないか考えてみよう。期限の表示が免除されている食品については未開封状態の賞味期限と同じ期限に設定できるかもしれない。
食品には基本的に賞味期限または消費期限が設定され包装に表示されるが、一部の食品は、賞味期限・消費期限の表示を省略することができる。
その食品は、次のものだ。
- でん粉
- チューインガム
- 冷菓
- 砂糖
- アイスクリーム類
- 食塩及び、うま味調味料
- 酒類
- 飲料水及び清涼飲料水(ガラス瓶入りのもの(紙栓をつけたものを除く。)又はポリエチレン製容器入りのものに限る。)
- 氷
- 常温で保存すること以外にその保存の方法に関し留意すべき事項がないもの
品質の劣化が極めて少ないものであるという理由で、期限の表示を省略ができることが、食品表示基準で決められている。
これらに該当するものであれば、開封後の取り扱いで汚染がないように注意していれば細菌的な問題は発生しないことが考えられる。ただし風味などの変化については、別途考える必要がある。
包装形態から考える方法として、開封をしたとしても食品に与える影響が変わらないかどうかを参考にすることがある。もともと包装が密閉されていない、あるいは包装資材に空気の透過性があるかどうかについてを判断材料とすることだ。
包装が密閉されていなかったり、包装資材が空気を透過するのであれば、食品は空気に触れていることになる。包装を開封したとしても、開封する前と変わることはない。包装から原材料を取り出す際の汚染や保管の状況に注意すれば、開封前と同じように保存できると考えてもよいはずだ。
たとえば、固形のチョコレートの包装で、ダンボール箱の中の包装袋は密閉されておらず、包装袋に包まれているだけであれば、開封後であっても未開封時の賞味期限までの保存を考えることができる。
一方、ナッツ類で包装に脱酸素剤を入れたものがあったとする。脱酸素剤が入っているということは、包装にはバリア性があり包装内は脱酸素状態になっているはずだ。開封前にはナッツは空気に触れていないが、開封後には空気に触れていることになる。こういった場合だと開封後には状況が変わってしまうので、開封後の期限と従来の賞味期限を同じにすることはできない。
あるいは、空気に触れていようが触れていまいが、食品やその保管温度から考えて、開封前と同じ期限まで保存できると考えられるものもあるだろう。たとえば、冷凍の野菜や果物があったとする。必要分だけを取り出したのであれば、残りは冷凍のままにするのであれば、開封後であっても未開封時の賞味期限までの保存を考えることができる。外気が当たらないように、たとえばより大きな袋で封をしておくなどの処置は必要だろう。
自社での検査
最後に、自社での検査によって期限を設定する方法だ。
検査方法しては、
- 細菌検査
- 官能検査
- 理化学検査
がある。
保管したい日数を、安全係数である0.7や0.8の数字で割った日数が、検査前の保存日数になる。
10日間保存したいのであれば、10÷0.7=14.285… となるので、15日間保存して検査しクリアすれば、10日間保存することができるようになる。
以上、原材料の開封後期限を設定する方法について解説した。これらの方法のどれかあるいは組み合わせから開封後期限を設定するとよいだろう。
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