脱酸素剤の選び方と使い方

脱酸素剤は、密閉容器内の酸素を吸収し、脱酸素状態を作り出すものだ。酸化など酸素による製品への影響を防止するために用いられる。

この記事では、脱酸素剤の使用目的、選び方や使い方について解説する。

脱酸素剤の効果

細菌の増殖防止

細菌には、増殖するのに酸素を必要とするもの、必要としないもの、酸素があってもなくても増殖できるものが存在する。容器包装内の酸素をなくせば、酸素を必要とする細菌の増殖を防止することができる。

カビの発生防止

カビは増殖をするのに酸素を必要とする。容器包装内の酸素をなくせば、カビの増殖を防止することができる。

酸化の防止

油脂は酸素と反応して劣化をするので、包装内が脱酸素状態となっており酸素がない状態であれば、酸化が防止される。

変色防止

酸化によって食品が色が変化してしまうことがある。脱酸素状態となれば酸化を要因とした変色を防止することができる。

脱酸素剤の選び方

食品に適した脱酸素剤を選ぶ

脱酸素剤の種類は、素材で分類すると鉄系と非鉄系に分かれる。

  • 鉄系・・・鉄粉を成分として用いたもの
  • 非鉄系・・・有機物を用いたもの。金属検出機に検知されない。

また、どのようにして反応するか、つまり効果を発揮するかで分類すると、自力反応型と水分依存型に分かれる。

  • 水分依存型・・・高湿度の空気に触れると酸素を吸収するタイプ
  • 自力反応型・・・空気にに触れると自力で反応し、酸素を吸収するタイプ

脱酸素剤を選ぶときには、食品や用途にあったものを選ぶ必要がある。

食品工場だと、包装工程に金属検出機を用いることがほとんどだろう。食品を脱酸素剤とともに包装した後に金属検出機に通す工程を作りたい場合、非鉄系の脱酸素剤を用いる必要がある。

水分依存型の脱酸素剤は、食品から蒸散する水分に触れて反応し、脱酸素の効果を発揮し始める。ご飯や生麺などは水分依存型の脱酸素剤を用いるとよい。

自立反応型は空気に触れると酸素吸収を開始する。水分の少ない食品に用いる。

包装サイズに合った脱酸素剤を選ぶ

脱酸素剤のサイズによって酸素の吸収量が変わる。当然サイズが大きいほうが酸素吸収量が大きくなる。

どの程度の酸素が吸収できるのかは、商品名に数字が付けられることが多く、たとえば「ABC」という脱酸素剤があったら、「ABC‐50」、「ABC‐100」といった具合で数字が付される。この50や100という数字は、50ml、100mlの酸素を吸収できることを示している。

包装容器内に存在する酸素量を調べて、それに適したサイズを選ぶ必要がある。

では、どのようにして酸素量を知るのかというと、業者に依頼して調べてもらう方法と、自分で調べる方法がある。

食品メーカーでの使用となれば、ある程度以上の使用量が見込めるだろう。これから新規で脱酸素剤を使うということであれば、仕入れ先が調べてくれるはずだ。

包装容器内の空気量の計算方法

自分で調べる場合には、次の計算式で求めることができる。

包装容器内の酸素 =包装容器の体積(ml) - 製品の体積(ml) × 0.21

包装容器の体積から製品の体積を引けば、包装内容器の体積となる。

空気内の酸素の割合は、21%なので、包装容器内の空気の体積に0.21を掛ければ、包装容器内の酸素の体積を計算することができる。

容器包装内の空気の体積を調べるには次の方法がある。

水中に包装容器を沈めてあふれた水量から調べる

包装がすっぽりと入る程度の容器を用意する。その容器いっぱいに水をためる。製品の入った包装容器全体をつける。

あふれた水の重さをはかる。もしくは、あふれた分の水を計量カップではかりながら容器に入れて、その量を求める。

重さが200gであったとしたら、200g = 200ml ですので、容器包装内の体積は200ml とわかる。

縦・横・高さから計算する

形が定まった容器であれば、縦・横・高さなどの数値を使って体積を計算することができる。

四角い容器であれば、縦 × 横 × 高さで計算して体積を求めることができるし、それ以外の形でも計算して求めることができることが多いだろう。

丸形、三角形、 →カシオのサイト

食品の体積は、

食品の重さ(g) ÷ 食品の密度(g/ml) 

で計算することができる。

製品によって密度は変わるが、仮に1g/mlとすれば、

製品の重さ(g) ÷ 1g/ml  = 食品の体積

製品の重さ(g) = 食品の体積

となるので、

包装容器内の酸素 = 包装容器の体積(ml) - 食品の重量(g) × 0.21

で、包装容器内の体積を求めることができる。

バリア性の高い包装材を用いる

脱酸素剤自体の選び方ではないが、包装材についても書いておきたい。

酸素を透過させない、バリア性の高い包装材を用いる必要がある。どれだけ酸素を透過するかは、酸素透過度という指標がある。

アルミ蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデンなど、バリア性のある素材とされている。

一般的なビニール袋や包装フィルムに用いれられるポリエチレン、ポロプロピレンは酸素を透過してしまう。

このあたりの素材については、包装資材の仕入れ先に聞いて脱酸素剤を使用できる包装資材を紹介してもらうのが間違いないだろう。

これを知らずにバリア性の無い包装材を用いてしまうと、脱酸素剤を入れても包装容器の外から空気が入ってきてしまうので、包装容器内が脱酸素状態にはならない。検知剤を入れていても、いっこうに検知剤の色は変わらないだろう。

脱酸素剤を使用しているのにも関わらず、検知剤の色が変色しない問題が発生した場合は、脱酸素剤のサイズが小さいことやバリア性のない包装を用いていないかを疑うとよい。

また、耐久性や柔軟性のある包装材も用いることも大事だ。脱酸素剤を使って、包装容器内が脱酸素状態になったとしても、配送途中に包装容器に穴が開いてしまし、空気が入ってくるといったことがありえる。

ピンホールの発生に注意する

目に見えないような小さい穴はピンホールと呼ばれる。ピンホールがあると、包装容器の外から空気が入ってきてしまうので、脱酸素状態にはならない。

ピンホールはシール部分で起こりやすい。

シールのチェック方法としては、次の2つがある。

一つ目の方法は、目視チェックである。シール部分にシワが発生していたり、部分に食品が噛みこまれていたりすると、密閉されていない可能性がある。これは目で見て確認することができる。

目で見てもわからない場合があるので、それには次の方法で対応する。

二つ目の方法は、水を入れた容器を用意し、その中に包装容器を沈め、押さえつけて空気がぶくぶくと出てこないかを確認する方法だ。

包装機でのシールを行う際には、使用開始のタイミングや定期的なタイミングで、シールが正しくできているかどうかチェックをしたほうがよいだろう。

三つ目の方法は、赤い用剤のスプレーを用いる方法で、包装容器を切ってシール部分の内側に赤い用剤のスプレーをかけて、引っ張るなどして、シール部分に赤い用剤が染みてこないかを見るものだ。

線状に染みる部分があれば、その箇所はシールがしっかりとされておらず、空気が通ることができる状態であるとわかる。

シール部分以外でも、発生することがある。

たとえば、包装が擦れてピンホールができるといったものだ。角底の包装袋に食品と脱酸素剤を入れ、シーラーで封をした後、シール部分を折り曲げてラベルを貼るという商品があった。

包装後の商品を並べて梱包し、おそらく運搬の際に、折り曲げられた角の部分がちょうど擦れてピンホールができてしまった事例があった。これは、ぴったりと折り曲げるのではなく、ゆるく折り曲げていたため包材が擦れやすくなっていたことと、包材の強度が低かったことが原因であった。

このようなことにも注意する必要がある。

検知剤

酸素が無くなって脱酸素状態になったのかどうかを目で見て知ることはできない。脱酸素状態になったかどうかを知るためには、検知剤が必要となる。

検知剤は、脱酸素状態になるにつれて色が変わってくる。この色の変化を見て、脱酸素状態になったかどうかを判定することができる。

検知剤単体のものもあるし、脱酸素剤にくっついており一体となったものもある。

脱酸素状態になるには時間がかかる

包装後に脱酸素状態になるにはある程度の時間がかかる。検知剤のよるチェックを行うのであれば、ある程度の時間をおいてから確認する必要がある。

脱酸素効果があるのは、常温

脱酸素剤が効果を発揮するのは常温である。冷蔵だと脱酸素の進みが遅くなり、冷凍だと脱酸素効果は発揮されない。

もしも冷凍する食品に検知剤を用いてチェックしたい場合には、常温で保管し検知剤の変色を確認してから冷凍保管をする必要がある。

脱酸素剤を入れた包装内では、徐々に酸素が吸収されていく。吸収されやすいのは常温で、冷蔵などの低温になると吸収速度が落ち、冷凍になると吸収されなくなる。

ただ、また温度を上げて常温になれば吸収されるようにはなる。

余った脱酸素剤

そのまま空気に触れる状態にしておくと、そのうち脱酸素効果を失ってしまう。

使用する際には、脱酸素剤の入ったパックは使用する直前に開けるようにし、開封するのは、必要最小限にしよう。

開封をした後、脱酸素剤は空気に触れて放置されると効果を失ってしまう。脱酸素剤ごとに空気に触れさせて放置してよい時間が設定されているはずなので、商品説明を見てみよう。

使用が終わり余った脱酸素剤は、包装パックに入れてシールを行う。できるだけ空気を抜いた状態でシールを行う。

できれば開封したたら必要分だけ取り出し、残りは包装パックに入れてすぐにシールしてしまったほうがよい。

もともと脱酸素剤が入れられた包装袋には検知剤が入っているので、しばらくして検知剤の色が変わり、脱酸素状態になったかどうか確認をしておこう。

また、もともと脱酸素剤が入っていた包装パックをそのまま使用しよう。他の袋に移し替えると、もしもその包装パックに脱酸素効果がない、つまり空気が透過してしまうとしたら、その中の脱酸素剤は効果を失うので注意しよう。

以上、脱酸素剤の使い方や注意点について解説した。

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