温度は、微生物が発育する上で重要な要因のひとつである。
細菌が増殖するときは、誘導期を経て、増殖期へ入り増加していくが、この増殖する前段階の誘導期が延長する。
また、細菌は2分裂することでその個体数を増やしていくが、温度が下がるほど分裂にかかる時間が長くなり、増殖スピードが落ちるのだ。
10℃以下の低温帯は、食中毒菌は発育は可能であるけれども、発育に適した温度(30~40℃)と比べると、著しく増殖速度が落ちるのである。
温度が低ければ低いほど、微生物の増殖速度は低下し、さらに冷凍状態まで温度が下がると、微生物は休眠状態になる。
・主な食中毒細菌の発育温度特性
増殖 可能 温度 |
至適 温度 |
備考 | |
サルモネラ | 5.2~ 46.2℃ |
35~ 43℃ |
10℃以下では ほどんど増殖 不可 |
カンピロ バクター |
30~ 46℃ |
42~ 43℃ |
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腸炎 ビブリオ |
10℃~ 43℃ |
35~ 37℃ |
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黄色ブドウ 球菌 |
6.7~ 48℃ |
35~ 40℃ |
10℃以下では ほどんど増殖 不可 |
病原性 大腸菌 |
6.7~ 48℃ |
35~ 40℃ |
10℃以下では ほどんど増殖 不可 |
表を見るとわかるように、発育温度は冷蔵帯から40℃後半までの温度帯の幅があるが、それぞれの食中毒菌が成長するにあたって最適な温度は40℃前後であり、10℃以下の冷蔵帯では増殖が難しくなる。
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ある商品を開発したときの話をしたい。レジの横に常温でおいて、数日間の消費期限をつけて販売しようとした商品があった。
その日数の保存がきくかどうか検査を行ったのだが、検査結果では細菌の増殖が見られた。
開発担当は、常温で販売するという商品企画にしたので保管温度は変えられないと言って、日持ち向上剤をつかうとか、アルコール蒸散剤をつかうなど試して、なんとか細菌の増殖を抑え食品の日持ちをさせようとした。
これなどは、冷蔵帯で販売することができれば、問題は解決するだろう。実際に、日持ち向上剤も、脱酸素剤も使用しなくても、細菌の発生は見られなかったのだ。
温度帯を下げて食品を保管して微生物を抑制するのは、薬剤に頼るよりも簡単であるし、非常に効果がある方法なのだ。
商品設計を行うときには、最初のうちに、この食品は20~30℃の温度の条件下で求める賞味期限をつけられるのかどうか、それとも冷蔵温度帯の条件下にしないといけないか考えて、保管温度帯を決めることも大事だろう。
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