解凍してから使用する冷凍の原材料があった。ふつうは水で解凍する。ただし、時間がないときには、ぬるま湯で解凍することになっていた。
ある日、新人がこの作業を行ったときに、解凍作業方法を間違えてしまった。熱いお湯をつかってしまい、その結果、原材料が凝固してしまい使用不可になってしまった。実際に温度が何度であったのかわからないからだが、その原材料の特性と変化を見る限り、熱湯に近い温度であったことは確かだ。
ここで取り上げたいのは、その失敗の対応策についての話だ。
安易な対応策
当事者とその上司の考えた今後の対応策は、端的にいうと「この原材料の温度は、この温度で行おう。○○℃を越えると凝固していまうから気をつけよう。」 であった。これだけで終わってしまった。
対策がこれでは、まったく問題を掘り下げることができていないと思った。問題の原因を考えていくときには、なぜ?いつ?誰が?など問いを発して、掘り下げていくだろうけれども、ひとつ堀っただけで終わってしまっている。
この話では、
・なぜ原材料が凝固したのか?
の問いに対して、
・熱いお湯をつかって解凍したからだ
で終わっているのである。実際に現場で発生していた事実を正確に把握しようとしないし、ひとつ問いを発して、ひとつ応えて対策を講じているだけだ。これだけでは浅すぎる。もっと重要な原因があるかもしれないし、「○○の原材料を解凍するときには、温度に気をつけよう」では今回の失敗だけにしか効果の無い対応である。たとえば、今回ミスしたひとが他の食材で同じようなミスをするかもしれないし、また、次年度に新人がはいってきたときに同じようなミスをする可能性もあるだろう。
このような、表面的な部分だけをとらえて次から○○に注意しようといった対応策はよくある。簡単に体裁だけは整えることができるからだろうか。
深堀りをして問題の幹を見つける
なぜ?と問いを続ける
しかし、ほんとうに再発防止を考えるのであれば、現場で発生した事実を把握し、もっと問題を掘り下げて、本質的なことを考えるべきである。もっと根本的な問題はないのか考えるべきである。そのほうが、ひとつの事例だけではなく、そのほかのことにも応用できようにもなるのだ。
たとえば、
- その新人は、正しいやり方を知っていたのか?こうすると食材がダメになってしまうことを知っていたのか?
- 知らないなら、なぜ知らないのか?教えられていないのか?
- 初めての作業だったのか、それとも何度かこの作業は行っていたのか?
- 初めての作業であったとしたら、その作業を指示した上司からの指導や教育はあったのか?
- 何度目かの作業であったら、なぜ今回だけ温度を上げたのか?
といったことを調べていく。当事者と身近にいりう同僚に話を聞けば、情報は得られるだろう。 ひとつの質問に対して答えを出したら、それに対して、なぜ?と質問を繰り返していく。
そうすると、もっとも重要な幹の部分のような問題にたどり着ける。 たとえばであるが、教育システムがなっていないとか、新人に大事なポイントも教育せず勝手にやらせてしまった、そういう教育システムに問題があるかもしれない。
ミスをした当事者も失敗を活かすために広く学ぶ
また、この失敗をした新人も考えるべきことがある。この原材料を解凍するときには温度に気を付けよう、と考えるだけだと、このひとつの問題だけにしか効果ない。失敗を活かせていないと思う。失敗したこと、わからなかったことに関して学ぶべきだろう。
食材の温度管理という視点で見れば、ほかの食材はどうだろうか?どういう温度で扱ったら品質が劣化するだろうか?と疑問を持つべきだ。
さらに視点を広げると、温度だけではなく、食材の扱い方全般について色々学んでみるのも面白いだろう。ひとつの失敗から、他のことも考えて知識を深め、頭を使って仕事をすべきである。
なぜなぜ分析
活用できる問題解決思考として、小倉仁志 著「なぜなぜ分析 実践編」がある。なぜなぜ分析とは、「なぜ?」を繰り返すことで問題の本質をとらえ、失敗の本当の原因を知り、有効な再発防止対策を導い出すための手法だ。この本には、製造現場の事例をつかって具体的なやり方が書いてある(この本に書いてあることをすべてマスターするのは大変だと思う。もう少しシンプルに考えてもよいかもしれない)。
身につけて活用するのは時間がかかるかもしれないが、マスターすれば有効な問題解決を実行していけるだろう。
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