異物をすばやく特定するために過去の異物情報をまとめておく

異物混入

近年は、非常に細かな異物の混入に関して食品メーカーの品質管理に報告がある。たとえば、食品の表面にホコリのようなものが乗っていたとか、食品のほんの一部がとれて食品の上にのっていた、といったものだ。

食品の安全に関する事故がニュースとして大きく取り上げられることが多く、消費者の不安も増幅し、異物の混入に対する意識が高まってきているのだ。

クレームが続くようになると、食品メーカーの工場では、製造工程や出荷前の製品のチェックに力が入るようになるので、そこで異物が発見されることも増え、製造部門から品質管理部門へ「こんな異物が仕掛品に付着していた」と連絡がくることも増えるだろう。

食品メーカーの品質管理は、さまざまな異物を取り扱っているけれども、これからはより細かい異物を多数取り扱っていくことになる。

その異物を特定するときに、工場内を見回って時間がかかってしまうことがないだろうか。

より早く異物の特定をするために、一度発見した異物の情報はデータベース化して蓄積しておくことをおススメしたい。以前に発生したことのあるものと同じ異物の混入があったときには、そのデータベースを参照し、すぐさま異物や異物の混入原因を特定できるようになる。

異物を発見してから、情報を蓄積するまでの流れを説明したい。

食品に混入した異物を特定する

異物混入のクレームが発生したときには、製造現場のどこで、何が、どのようにして混入したかを調査することになる。

異物と製造現場にあるものを照合して、一致するものはないか確認していく。

肉眼で見てわかるのであれば容易であるが、肉眼で見てわからない場合は、顕微鏡やデジタルマイクロスコープなどで拡大して見てみる。

マイクロスコープは扱いやすいし、画像も撮影して保存ができるのでよい。異物と、製造現場にある近しいものを比較していくと、一致するものが出てくる。

拡大画像でもわからないようなものは、分析検査をすることになるが、だいたいの異物は拡大すればなんであるのかわかることが多い。

製造現場を調査して混入経路を特定すると、こんなものが混入してしまったのか!?と驚いてしまうようなものが混入していた場合もあるだろう。

異物を特定したら対策を打つ

異物の混入原因、混入経路を特定したあとには、その異物が食品に混入する事故が再び発生してしまわないように対策をとる。

しかし、その対策がよくなかったか、対策はよかったのだが実施の継続ができず、再び同じ異物混入のクレームが発生してしまったとしよう。

そのときに、以前発生した異物混入クレームと同じだと思い出すことができればいいのだが、数年に1回程度しか起きない稀なクレームは忘れてしまっていたり、あるいは、クレーム対策を行う担当者が変わっていて、前回のクレームの情報を把握していないこともあるだろう。

その場合には、また一から製造現場を確認して、異物を探し、発見しないといけなくなる。

発見した異物の情報を蓄積しておく

以前に一度異物の特定をしているはずなのに、再び工場の中を探し回らなくてはいけなくなるのは、ムダな時間になる。これを避けるために、一度発見した異物の情報を記録して、蓄積しておくのがよい。

細い繊維のようなものが、製造途中の仕掛品に付着しているのを発見したことがあった。

一見フキンなどの繊維に見えたのだが、拡大して見てみると違っていた。色々と工場内に同じものがないか探し回った結果、製造現場で使用していた「養生テープの端が細く切れたもの」であるとわかった。

これを発見するのに、なかなかの時間がかかった。

異物の画像、拡大画像、またそれが「養生テープの端が細く切れたもの」であることを記録しておいた。

しばらくして(しばらくといっても数年後くらい)、今度はお客様からのクレームで食品に繊維のようなものが付着していると連絡があった。これも、一見フキンなどの繊維のように見えたのだが、拡大してみていると違っていた。

そして、過去の異物情報をまとめてある資料を取り出し、以前発見した異物の中で同じものがないかどうか確認した。社内で発見したことがある「養生テープの端が細く切れたもの」であるとわかった。

1回目の発見のときに、製造現場内では養生テープの使用はやめたはずだったが、まだ工場内で使われている箇所が残ってしまっていたため、再度混入が発生してしまったのだった。

1回目には、異物を探し出すのにとても時間がかかったのだが、2回目に同じ異物混入が発生したときには、異物データベースを活用して製造現現場を探し回ることなく、すぐに異物の特定ができたのである。(再発させてしまうのはよくないことだが。)

もし、1回目の発生のときに養生テープ切れ端の混入について記録、画像を残していなかったらどうだろうか。2回目のときにも、再び製造現場を探し回る羽目になり、異物を特定するのに時間がかかっていたであろう。

具体的に残しておくこと

異物の混入が発生したら、次回から異物の特定をすぐできるようにするために、多少めんどうでも異物混入の記録を残し、データベースを作成しておくのがよい。これは手間がかからないようにシンプルなものでよい。

  • 日付
  • 異物は何か
  • 異物の画像(拡大画像含む)
  • 異物が混入していた製品名
  • 異物の混入経路(どこでどのように混入したか)

の5点くらいでよいだろう。製造工場にある機械や道具、原材料、資材によって食品に混入しうる異物が異なるので、この異物データベースの内容は、製造工場によって変わってくる。

異物のクレームが起きたが初見では異物がなんなのかわからない場合、または製造現場で仕掛品に異物混入があったが初見で異物が何なのかわからない場合には、異物情報を蓄積したデータベースをざっと見る。仮に過去に発生したものであれば、すぐに異物とその混入経路を特定することができる。

逆に、データベースには存在しなかった場合でも、これまでに発生したことのない異物混入になるので、過去に発生した以外のところで原因を探せばいいので、異物と異物の入原因を特定するのに役立つだろう。

作成するのに多少の時間はかかるし、すぐには役立たない。しかし、工場内で混入してしまう可能性がある異物をおおよそおさえれば、追加でリストアップしていくものも少なくなり、その後長らく使えるものになる。使用頻度は低いが、長く使うことで作成した労力の元が取れるだろう。

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